農作物、作りすぎには注意【※損します】
「たくさん良いものを作りたい!」
「だれよりも多く収穫したい!」 という気持ちが強いと思います。
私もそうでした。 山梨県ですももを栽培していますが、 山梨はすももの生産量日本一です。 だから、山梨県内で一番栽培すれば、日本トップをとれると思っていました。
でも、農業を15年近くやってきて、 量を作りすぎると損することを知りました。 農業ならではの問題です。
このことを知らないと、 暑い中汗かきながら頑張って栽培しても、 収穫しても、結局損するだけです。 時間も労力も無駄になります。
そうならないために、 私が経験した失敗談をお伝えします。 「こういうことがあるんだ」と知っておくだけでも、 あなたの農業ライフがより順調になると思います。
今回は主に直接取引先とやりとりしている方が対象です。 これから取引していくあなた、 収穫量がどんどん増えていくあなたにとって参考になれば幸いです。
目次
農作物を作りすぎると損する理由
まずは結論から言います。 農作物を作りすぎると損する理由は2つあります。
- 出荷できない
- 価格が下がる
出荷できない
これは単純明快です。 お取引先様が受け入れられる量には限度があります。 こちらはたくさん収穫できて、良いものができて、納品したいですよね。 でも、お取引先様は「そんなに要らないよ」と言って、 「2、3日出荷を休んでもらえる?」と言われてしまいます。
こちらは自然のものなので、「毎日収穫しないと、実が柔らかくなっちゃうよ」 「サイズが大きくなっちゃうよ」と言っても、 聞いてもらえません。 行き場所を失って、途方に暮れます。
「他の取引先に出せば良いじゃないか」と思われるかもしれませんが、 そう簡単にはいきません。 他の取引先も同じように量に限度があります。 基本発注量というのが決められていて、 それ以上出荷できない場合が多いです。
数量関係なく出せるところもありますが、 そこでも「ちょっと量を減らして」と言われます。
これは一次産業ならでは、農業ならではの問題です。 自然のものなのでずっと日持ちするわけではありません。 工業製品みたいにずっと置いておけるものではありません。 だから、「出荷量を減らして」「出荷をやめて」と言われると、 かなり焦ります。
価格が下がる
もう一つの理由は価格が下がることです。 市場ではモノが溢れれば、その分買い叩かれます。 価格が下がります。 例えば、買いたい人は100個欲しいけど、 売りたい人は200個持ってきたとします。 すると、「そんなに要らないよ」と言って、「なら価格を下げて」と言われます。
JAも同じです。 他の地域で豊作だったり、他の産地が同じ品目を出荷し始めると、 価格が一気に落ちます。 こちらは良いものを栽培して収穫して出荷しているのに、 価格が安くなります。 正当な評価を得られないのは辛いですよね。
ここで話を振り返っておきましょう。 農作物を作りすぎると損する理由は2つでした。
- 出荷できない
- 価格が下がる
これが一つ目のチャプターの内容でした。
具体的なエピソード
次に、私が実際に感じたエピソードをお話します。 これが二つ目のチャプターです。
6月下旬にスイートコーンを栽培していました。 早朝4時半ぐらいの、まだ薄暗い、夏でもひんやりした畑で、 とうもろこしの列と列の間に一輪車、ネコを入れて必死になって収穫していました。 汗だくでした。
「今日は朝どりスイートコーンたくさん収穫できたなあ」と思って、 軽トラの荷台満載に乗せて作業場に戻りました。 鬼のように一本一本選果していきました。 サイズ別に分けたコンテナを積み上げていくと、いつもの納品量の2倍はあったんです。
これを数箇所のお取引先様へ開店前に間に合うように納品へ行ったんですが、 行ってみてその多さを見た店長は、 「うちはこんなにさばけないなあ」と言われました。 こちらも「まじか…」となって、でも売り先が限られているから、 なんとか相談してみたら、 「価格をこれくらいにしてもらえれば、なんとか売り切るよ」と言ってもらって、さばけたんです。
次の納品先へ行っても
他の店舗にも納品しに行って同じ対応されて、同じ流れでさばいていって、 これを繰り返してもまだ、かなりの量が残っていました。 最後の店舗に納品しに行ったときには、 そこの店舗に納品していた量の3倍のコンテナ数はありました。
それを見た店長も絶句していましたが、 ここでですよ。 青果物業界の暗黙のルールを垣間見ることができました。
その店長はすべて買い取ってくれたんです。 「菊島君も他に行き先ないなら、全部置いてっていいよ。 ただ、値段はこれくらいにしてもらえればうまくやるから」と言ってくれました。
買い取る側の人がキャパオーバーでも、売る側が困っていたら、 何がなんでも買い取るというのが習慣としてあるんです。
これ市場内でもそうでして、市場にたくさんリンゴがあふれていて、 「誰か買ってくれない?〇〇さんどう?」と声がかけられたときに 受け入れた業者さんは信用が増して、逆にリンゴが少ないときや仕入れられないときには 優先してその業者さんのところにリンゴが集まってくる慣習になるんです。
本当に人と人の関係性ですよね。 「あの時助けてくれたから、今度は助けるよ」という感じです。
信頼があったからこそ
だから私のスイートコーンが全部納品できたんで、助けてもらえたんで、 自然と私もそこの店舗に対して優先的に納品していく流れになるわけです。 ただ、そうは言ってもいつもの3倍量、さばけますか?と聞いたんです。 そしたら、店長が 「やっぱり売値を下げて特売並みに売ることになるから利益は少ないよ。 ただただ販売する労力、手間ばかりかかって、その割には売り上げは上がっても利益は少ないから、 それってお互い損してるよね」と言われました。 もうこれが、農作物を作りすぎた問題なんだなと思いました。
こちらももちろん、本当はその価格で納品すると利益がほとんどない状態ですが 捨ててしまうよりはいいと思ってすべて置いておくわけです。
こちらも早朝から汗だくになって時間に追われて重いコンテナを積んで あちこち納品行っても、利益がほとんどない。
これって、取引先様もこちらも、お互いメリットがないですよね。
生産者側だけが損してるわけじゃなく、お取引先様も損してる。頑張ってくださってるのを感じ取れました。 以上が二つ目のチャプター、具体的なエピソードの内容でした。
どう対処したらいいのか?
最後に、どう対処したらいいのかをお話します。 これが三つ目のチャプターです。
結論としてはこれも単純明快で 適量を作るということです。
さらに言えば「もっと欲しい!と思ってもらえるくらいの数量」がちょうどいいと思います。 すべて満足してもらえる量よりも、ちょっと足りないくらいがお互いメリットがあると思います。
なぜかというと、 利益を維持できる 労力も疲弊しない
生産者もお取引先様もです。 双方、メリットがあります。
豊作のときは?
ただここまで聞いて、 そうは言っても豊作になっちゃったときあるけど?
確かに豊作貧乏という言葉がありますよね。
そのときは、ちょっとは取引先様に対して数量多めでお願いして、 残りの分は市場にお願いするのが良いかと思います。 市場に流すですね。
なぜなら、取引先様とは良好な関係でありたいので、あまり負担はかけたくないからです。 市場は市場で、安いものが欲しい、値段で見てる人がいますので、 その方に供給しますというマインドでいます。
そうは言っても、高く売れないでしょ?と思われるかもしれませんが、 その余剰分は安く売るつもりでいますし、 かつ他の新たなお取引先様とご縁があったとき用として考えておけばいいかと思います。 せっかく良いものができたのに安く販売するのも勿体無いですよね。 その気持ちが新規開拓しようというモチベーションにつながると思います。
終わりに
いかがでしたか?
いいものをたくさん作っては見たものの、売り先に困ったエピソードでした。
こんな感じで、農業にプラスになりそうなことをコンテンツにしています。
参考になりましたら幸いです。
「もっと、農業に夢中になっちゃおう。」
みなさんに、もっと、農業に夢中になっていただきたい想いで、
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written by 農業、始める